父親が行方不明、病気で寝たきりの母を持つ少年、ジョバンニはそのために学校で友達にいじめられていた。ケンタウル祭の夜、丘に寝転んでいたジョバンニはいつのまにか銀河鉄道に乗っていた。そこには優しい友達のカムパネルラもいた。列車はいくつもの駅に止まり、二人はさまざまな人々に出会う。最後に二人きりになって、ジョバンニは二人でどこまでも行こうと決意するが、やがてカムパネルラは消えてしまう。気づくとジョバンニは元の丘にいた。そしてカムパネルラが川で溺れたこと知る。
銀河を渡る列車というと新しい感じがするが、一方でまたそれが自然に思えるのは、鉄道が持つ、ほっとするような懐かしさの魅力ゆえである。この銀河鉄道は死者の列車。列車を下りたら完全に死者になってしまう。父親が不在で友達にいじめられるジョバンニの心細さが基本のトーンで、それが唯一親切なカムパネルラの死への旅の同行となるわけだが、その根底には、賢治の最大の理解者であった妹のトシの死がある。彼女の魂にできるところまで寄り添いたい。その思いが生者であるジョバンニを銀河鉄道に乗せた。
銀河鉄道の夜 宮沢賢治
ジョバンニはああと深く息しました。
「カムパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕の体なんか百遍灼いてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙が浮かんでいました。
「けれどもほんとうの幸は一体なんだろう。」ジョバンニが云いました。
「僕分からない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。
- 宮沢賢治
- ジョバンニ(小说中的人物)
- カムパネルラ(小说中的人物)
- ねえ
- さそり(前文有个天蝎之火的故事)
- ほんとう
- みんな
- 幸(さいわい)
- 百遍
- 灼く
- かまう
- 眼
- 一体
- 云う
乔万尼蓦地叹了一口气。
“康帕内拉,又只剩下我们两个人了。不管天涯海角我们都一起去吧!我也要像那只蝎子一样,只要是为了众人的幸福,就是浴火千百次,也没有关系。”
“嗯,我也是ー样的。”康帕内拉的眼中浮现出美丽的泪水。
“然而,真正的幸福到底是什么?”乔万尼说道。
“我也不知道。”康帕内拉茫然地说道。
“我们一定要振作起来! ”乔万尼的胸中仿佛涌出一股新的力量,他深深地吸了一口气之后说道。
「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔だよ。」カムパネルラが少しそっちを避けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川のひととこに大きな真っ暗な孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすって覗いてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「僕もうあんな大きな暗の中だって怖くない。きっとみんなのほんとうの幸を探しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう。」
- あすこ
- 石炭袋
- そらの孔
- ジョバンニ(小说中的人物)
- カムパネルラ(小说中的人物)
- どほんと
- あく
- 眼をこする
- しんしん
- 云う
- 暗(やみ)
- みんな
- 幸(さいわい)
“啊,那边是煤袋®,是天之洞啊!”康帕内拉像是要避开什么似的指着银河的某一处说。乔万尼往那边看去,不禁倒吸一口凉气。银河的一个角落有个巨大深黑的孔,那里面到底有什么?不管揉了多少次眼睛,再怎么努力地向里面窥望也看不见任何东西,看得眼睛一阵刺痛。乔万尼说道:“就算在那巨大的黑暗之中我也不害怕。我一定要找寻众人的真正幸福,不管天涯海角。我们一起去吧!”
①煤袋星云,南十字星座α星正东方的暗黑星云。
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄かに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫びました。
ジョバンニもそっちを見ましたけれどもそこはぼんやり白くけむっているばかりどうしても力ムパネルラが云ったように思われませんでした。なんとも云えずさびしい気がしてぼんやりそっちを見ていましたら向うの河岸に2本の電信柱が丁度両方から腕を組んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
“嗯,一起去。啊,那边的原野是多么美丽啊!大家都在那里集合。那里就是真正的天堂啊。啊,我妈妈也在那儿呢!”康帕内拉突然指着窗外一片遥远而美丽的原野叫道。
乔万尼也跟着往那边望去,可是只看到了白雾茫茫,朦胧一片,实在很难和康帕内拉说的景象联想在一起。他只是寂寞而恍惚地看着那边,対面的河岸上有两根电线杆仿佛互相牵着手,中间托了一根横木站在那儿。
- ああ
- あすこ
- きれい
- みんな
- ねえ
- ほんとう
- あっ
- ぼく
- カムパネルラ(小说中的人物)
- 俄かに
- ジョバンニ(小说中的人物)
- ぼんやり
- けむる
- 云う
- さびしい
- 丁度
- 腕木
- つらねる
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニがこう云いながら振り返って見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかり光っていました。ジョバンニはまるで鉄砲丸のように立ち上がりました。そして誰にも聞えないように窓の外へ体を乗り出して力いっぱい激しく胸を打って叫びそれからもう咽喉いっぱい泣き出しました。もうそこらが一ぺんに真っ暗になったように思いました。
ジョバンニは眼を開きました。もとの丘の草の中に疲れて眠っていたのでした。胸はなんだかおかしく熱り頰には冷たい涙が流れていました。
“康帕内拉,我们是要一起去吧。”乔万尼一边说着一边回过头去,却发现康帕内拉已经不在位子上了,只剩下黑色的天鹅绒还在闪闪发光。乔万尼子弹一样跳了起来,为了不让其他人听见,他将身子探出窗外,用力地敲打自己的胸膛大叫,然后放声大哭。他觉得周围的世界顿时一片漆黒。
乔万尼睁开眼,原来自己疲累地睡倒在山丘的草丛里。他的胸中升起一股奇怪的热气,两颊上挂满了冰凉的泪水。
- カムパネルラ(小说中的人物)
- 一緒に
- ねえ
- 云う
- いままで
- 咽喉(のど)
- びろうど
- 一ぺん
- ジョバンニ(小说中的人物)
- 眼
- 熱る(ほてる)